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「動物病院 &トリミングサロン向け ハッピー経営のための応援ブログ」

投稿日時 : 2025-07-15 23:31:46 (23 ヒット)


事業承継の際に、株式の譲渡価額を決めるには、どうすればよいのでしょう。いろいろな計算方法があり、どれを選択するかで、評価の金額がブレます。願わくば、売手も買手も納得度が高くなるように決めたいところです。


1)実際の株式評価価額の計算方法ですが、概ね3つの会計手法が挙げられます。
(1)税務会計、(2)財務会計、(3)管理会計、の3つです。それぞれ目的が異なります。

(1)税務会計は納税をすることが目的です。税法に基づいて税務署に報告するためのものです。税務会計は、税理士さんがよく用います。税理士さんに事業承継の相談をすると、彼らは基本的に税務会計で株式の評価をします。非上場企業の場合は相続税法上の株価評価になり、会社の規模別に評価方法が決められていますので、どうしてもそれなり(低め)の金額になってしまいます。少しでも良い条件で事業承継したければ、(1)税務会計だけではなく、(2)財務会計や(3)管理会計も併用し、企業の価値(バリュー)を適正に評価することが肝要です。

(2)財務会計は財産や利益の計算をすることが目的です。会計基準に基づいて、経営状況を株主や債権者、投資家などに示すためのものです。財務会計で事業承継時の株式評価価額を計算する手法としては、DCF法(ディスカウントキャッシュフローという計算方法)があります。未来に生み出すであろう収益を演繹法的に計算するものです。業界にM&Aの追い風が吹いている売手市場では、その事業を買いたいニーズが高まりますから、高値が罷り通ります。ただし、売手市場がいつまでも続くとは限りません。買手の納得度を高めるためには、演繹法だけではなく、現場目線の帰納法的な補足説明が必要でしょう。

演繹(えんえき)法はルールや法則に当てはめて結論を導き出す机上論的なものです。帰納(きのう)法は現場の事実や実例から結論にたどり着く実証的な方法です。この2つのロジックを状況に応じて使い分けることで、最適解に近づくことができるでしょう。

(3)管理会計は経営者が事業における経営判断をすることが目的です。現場の実情を客観的に分析し、地に足の着いた現場情報(シェアなど)を活用して、自社の伸びしろを帰納法的に把握・管理するためのものです。事業承継で株式評価価額を計算する際に管理会計を併用すると、買手がその業界のことを分かっている場合、その価値(バリュー)が現場目線の共通言語でしっかりと伝わりますので、評価価額への納得度が格段に上がります。税務会計よりも、そして財務会計よりも、適正(高め)な価額でスピーディーに事業承継を成就させたいのであれば、管理会計は切り札になるでしょう。

以上、3つの会計手法を整理してみました。どれを選ぶかによって、その評価価額の高い⇔低いや、売手と買手が合意するスピードの速い⇔遅いが左右されます。


2)抽象的な難しい話が続きましたが、具体的に売手目線でケーススタディをしてみましょう。分かりやすいように、身近で一般的な例え話を交えて検証してみます。

例えば、亡くなったおじいちゃんの遺品整理をしていると、着古したジーンズが何本も出てきたとします。生前、おじいちゃんは「これはわしの宝物じゃ」と言っていました。よく分からない遺族が、どうしたものかと話し合い、誰も履かないし、処分することになりました。では、一体どのように処分するのか。
【A案】行政に紙・布のゴミとして捨てれば、0円です。
【B案】近所のリサイクルショップに持ち込めば、いくらかにはなるでしょう。
【C案】では、そのジーンズがヴィンテージジーンズだったらどうでしょう?ブランド古着買取専門店に持ち込めば、その価値(バリュー)を適切に評価してもらえます。パッチにはリーバイスの501と書かれています。足の部分の裏側には糸で赤い線が入っているものもあります。赤いタブにはLevi’s ではなくLEVI’Sと大文字で刺繍されているものがあります。これらは希少価値があり、高値が付きます。1本100万円以上で売られることも…

何も知らずに【A案】で紙・布のごみに出してしまったらとんでもないことです。0円で回収する行政サービスの人に非はありません。捨ててしまう遺族が無知なのです。
あるいは、【B案】で何も知らないリサイクルショップが些少の金額で買ってくれたとて、後からヴィンテージジーンズの価値を知ったら、遺族は大いに悔やむことでしょう。リサイクルショップの買取カウンターのパートのスタッフに非はありません。叩き売る遺族が無知なのです。
ゆえに、【C案】でしっかりと価値(バリュー)を評価して、それを分かってくれる古着買取専門店に適切な価額で買ってもらい、ビンテージジーンズが好きな人に大切に扱ってもらってこそ、501もおじいちゃんも浮かばれます。商売は、その価値(バリュー)を分かってナンボなのです。

事業承継の場合も、じつは同じようなものです。
【A案】の行政サービスで0円で処分してもらうようなことは、事業承継せずに廃業するようなものです。状況によっては、勿体ないです。もちろん、あまりにも財務内容が芳しくない場合は廃業もやむなしですが、願わくば、後世に遺したいところです。
【B案】の近所のリサイクルショップに持ち込むようなことは、安直に顧問税理士や金融機関等に事業承継の相談をして、税務会計にて相続税法上の株価評価で安めに売ってしまうようなものです。
【C案】の古着買取専門店に適切な価額で買ってもらうようなことは、財務会計管理会計を併用することでその事業の価値(バリュー)を適切に評価し、上手に事業承継するようなものです。

如何でしょうか。ヴィンテージジーンズの例え話は、売手目線でのケーススタディでした。イメージが湧きましたでしょうか。

それでは、続いて買手目線でもケーススタディをしてみます。こちらも分かりやすいように、身近で一般的な例え話を交えて検証してみます。

普段のお買い物の際、買い物慣れしている商材、例えば野菜や魚を買うときに、消費者は価値と相場がアタマに入っています。キャベツなら、愛知や長野産がよいとか、魚は夏だったら鰻がいいけど完全無投薬なら〇〇〇産が頑張っているとか、土用の丑の日は鰻の相場が上がっているから見送ろうとか、それぞれの消費者に生活の知恵があります。そして、初物の魚が1尾ウン万円なんてニュースを見聞きすると、気っぷのいい江戸っ子は買うのかもしれませんが、一般大衆の感覚では「誰がそんな高いもの買うのだろう?」と思うでしょう。

それでは、買い物慣れしていない商材はどうか。例えば北海道の新千歳空港でお土産にカニを買って帰ろうと思ってお店に立ち寄ってみたとします。タラバガニ1杯3万円の値が付いています。これが果たして高いのか安いのか。そして、身がギッシリなのかスカスカなのか。それらが分からなければ、一般大衆の感覚では「よく分からないなぁ。失敗したくないから、今回は見送ろう」となるでしょう。

つまり、買い物慣れしていない商材は、買手は慎重になります。そして、お財布の紐が緩むのは、価値がしっかりと確認でき、適正な価格だと分かった時です。やはり、商売は、その価値(バリュー)を分かってナンボなのです。

如何でしょうか。買手目線でのケーススタディも、イメージが湧きましたでしょうか。消費者感覚では、よくある話だと思います。そして、事業承継の場合も、じつは同じようなものです。事業承継は、それこそ買い物慣れしていない商材です。(1)税務会計や(2)財務会計で、ルールに従って然るべき評価価額を取り纏めるだけでは、「よく分からないなぁ。失敗したくないから、今回は見送ろう」となりやすいです。ゆえに、(3)管理会計帰納法的に価値(バリュー)を分かるようにすることが肝要です。


3)それでは、もっと実践的な事業承継のケーススタディをしてみます。仮に譲渡希望の動物病院が2件あったとします。A動物病院B動物病院。譲渡希望企業の案内(ノンネームシート)ではどちらも事業内容、売上、利益、希望譲渡条件の金額等が同等だったとします。この時点では企業名や屋号等の詳細が開示されていないので、買い手にはABのどちらが魅力的かは分かりません。そこで、買手サイドは機密保持契約書を交わして、企業概要書(インフォメーション・メモランダム)を入手します。実際に企業名や屋号、事業内容などを確認すると、その動物病院の概要が個別具体的に分かります。しかし、(1)税務会計や(2)財務会計で取りまとめた企業概要書だけでは、なかなか正味の価値(バリュー)が分かりません。もっと詳細な現場情報が分からなければ、買手は判断しかねます。

よく分からないのであれば、買手は拙速に買うようなことは慎みます。そして、希望譲渡条件の金額を値下げしてもらえないかという交渉が発生したりします。このような話は、(1)税務会計や(2)財務会計による株価評価でのありがちな展開です。

一方、(3)管理会計を併用して帰納法で臨んだ場合はどうなるのでしょう。例えば、しっかりとした管理会計で経営をしている動物病院であれば、症例毎の外来数の違いを確認することが出来たりします。

【A動物病院】
消化器、皮膚の新患(もしくは再初診)が週にそれぞれ3〜4件ずつ来院。
腫瘍、循環器の新患(もしくは再初診)が週にそれぞれ0〜1件ずつ来院。
【B動物病院】
消化器、皮膚の新患(もしくは再初診)が週にそれぞれ2〜3件ずつ来院。
腫瘍、循環器の新患(もしくは再初診)が週にそれぞれ2〜3件ずつ来院。

ABのどちらが魅力的だと思いますか?
恐らく、税理士さんや銀行員やファンドの方々には判断できないと思います。

結論からいうと、この状況であれば、【B動物病院】が魅力的です。その理由は、管理会計におけるシェア理論で説明可能です。
車で10分〜15分圏内に20万人前後の人口が見込める一般的な前提でいくと、
【A動物病院】の症例別のシェアは、
消化器、皮膚はそれぞれ7%前後になります。
腫瘍、循環器はそれぞれ3〜7%前後になります。
7%前後のシェアというのは、病院の名前が診療圏内で知られている程度の意味合いです。決して繁盛しているというレベルではありません。つまり、これらのシェアは、【A動物病院】にはこれといったストロングポイントが無い、ゼネラリスト(かかりつけの町医者)的な病院ということを示唆しています。

一方、【B動物病院】の症例別のシェアは、
消化器、皮膚はそれぞれ5%前後になります。Aの方が消化器や皮膚のシェアが高いという見方もできますが、AもBも消化器や皮膚のシェアは1桁台に過ぎませんし、どちらもどんぐりの背比べのようなものですから、あまり重視はしません。
注目すべきは【B動物病院】の腫瘍、循環器のシェアです。それぞれ15〜26%前後になります。
15〜26%のシェアというのは、診療圏内で地域一番レベル、もしくは明確に繁盛しているという意味合いです。ガンや心臓病に強い、ゼネラリスト×スペシャリスト的な腕のいい病院ということを示唆しています。

まともな経営コンサルタントであれば、管理会計において、シェアを活用したマーケティングをします。シェアが1桁の場合と、シェア15〜26%の場合では、打つべき施策が全く異なります。簡単にいうと、何かの施策を打った場合、前者は成果が出るまでに時間がかかりますが、後者は打てば響くように成果が出やすいです。一般的に、シェアによってマーケティングの方法論が違うのです。
そして、病院全体のシェア(カルテ数など)という大雑把なものではなく、犬・猫の症例毎のシェアを適切に把握している方が望ましいです。

というのも、昨今のように市場が安定期に入ってくると、ゼネラリスト的に「何でもできます」という経営の方法は、他との差別化がしにくいので、価格競争に巻き込まれやすくなるのです。身近な例では、ファミリーレストランがその好例です。和・洋・中なんでも載っているメニューブックでは、広く浅くといった品揃えになってしまうので、陳腐化しやすく、やむを得ず安売りするしかなくなってしまうものです。一方、明確な強みがあると、他との差別化がしやすく、例えばイタリアンの単品特化とか、ハンバーグ等の単品特化で強みを訴求しているお店はコンスタントに好調です。
この話は普遍的で、動物病院にも当てはまります。飼育頭数が横ばいや減少に転じている昨今は、動物病院業界も安定期です。獣医療は全科診療(ゼネラリスト的に何でも診る)と言えども、安定期は明確に専門特化した得意分野のある動物病院(スペシャリスト)が勝ち残ります。

ゆえに、A動物病院B動物病院であれば、腫瘍や循環器のシェアが15〜26%のB動物病院の方が価値(バリュー)が高い(≒早く高く事業承継が成就する)と判断できます。

一方、トリミングサロンの場合も、その事業内容がトリミングだけなのか、フードやシーツ等の販売もしているのか、ホテルも対応しているのか、それぞれのシェアは何%なのかによって、その価値やポテンシャルはブレます。また、JKCの公認トリマー等の優秀なスタッフが何人揃っているのか、事業承継後も引き続き働いてくれる保証(キーマン条項)があるのかどうかで、さらにその価値(バリュー)が違ってきます。


4)最近の事業承継は、金融機関も専門部隊を抱えたりしますし、参入するファンドやM&A事業者が増えています。選択肢が増えるので、業界的にはよい傾向だと思います。ただし、「うちは着手金が安いよ」とか「成功報酬の手数料が安いよ」とアドバイザリー契約での安さをPRしているところに関しては、慎重に吟味した方がよいと思います。
安いからといって、そこが税務会計だけで株式の評価をしていた場合、どうなるでしょう。恐らく、譲渡する側(売手)が手にする売却金額は小さくなってしまいます。売手は「安物買いの銭失い」になってしまうでしょう。
あるいは、財務会計演繹法)だけで株式の評価をした場合、状況によっては価値(バリュー)が適切に伝わらず、マネーゲームの様になってしまうことも。やはり、買手が納得しなければ、なかなか事業承継が成立してくれませんから、スケジュールが長期化してしまいます。

ヴィンテージジーンズも、事業承継も、売買というのは価値(バリュー)を正しく伝えることです。

中小企業が100年繁盛するためには、普段から地に足の着いた管理会計に馴染んでおくことが肝要です。
そして、イザ事業承継を検討する場合は、財務会計管理会計を併用するのが賢明です。

あなたの会社が100年続きますように・・・
そして、
トリミング業界と動物病院業界がますます繁盛しますように・・・

【まとめ】
・株式の評価価額を計算するには、
(1)相続税法による評価(税務会計
(2)未来へのポテンシャルに基づいた演繹法による評価(財務会計
(3)現場の事実に基づいた帰納法による評価(管理会計)がある。
・株式の評価価額の計算根拠によって、早く高く売れるか、遅く安く売れるかが決まる。
・計算根拠に納得度が高ければ、スムーズに事業承継が成就しやすく、WIN-WIN-WINの関係になりやすい。



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株式会社フクノカミ Fukunokami Consulting Inc.
〜 中小企業が100年繁盛するために 〜
オフィシャルサイト https://fmcf.co.jp



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著者紹介
株式会社フクノカミ
代表取締役 金子男也

経営コンサルタント
1967年生まれ。静岡県出身。関西在住。

世界で初めて株式上場した国内最大級のコンサルティング会社にて、 動物病院やトリミングサロンなどのペット関連事業に専門特化して 20年以上勤務し、円満退社。 その後、株式会社フクノカミを創業。 動物病院やトリミングサロンなどの中小企業が 100年繁盛する仕組みづくりのサポートを展開中。 マーケティング、マネジメントから事業承継まで、 一気通貫で中小企業の経営課題に対応。

公式HP :https://fmcf.co.jp/

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