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「動物病院 &トリミングサロン向け ハッピー経営のための応援ブログ」

投稿日時 : 2025-03-05 08:20:57 (59 ヒット)


物価の上昇に伴い、国は賃上げを奨励しています。世間では最低賃金のアップとか、企業の賃金上昇とか、いろんな情報が目につきます。初任給が30万円や40万円超えの大手企業が出てきています。ユニクロ30万円→33万円(1・2年で店長になれば41万円)、ダイワハウス25万円→35万円、三井住友銀行25.5万円→30万円、東京海上日動火災保険28万円→41万円など。さすがに大手企業の賃金は目立ちます。

また、国は雇用の流動化も促しています。ご存知のことと思いますが、雇用保険法が改正され、4月から転職しやすくなります。従来は、一定期間雇用保険に入っていた人が自己都合退職をすると、7日間の待機期間と2ヶ月の給付制限期間を経て、失業給付金が入金されるまで基本的に3ヶ月ほどかかりました。しかし、4月からは給付制限期間が1ヶ月もしくは0ヶ月と短くなりますので、従来よりも離職・転職がしやすくなります。退職者は継続的に入金されるので、雇用が流動的になります。

国は賃上げを奨励しており、雇用の流動化も促しているわけですから、国民にとっては有益な改正と思います。そして、これらのニュースを目にすると、既存スタッフの中から賃上げに対する要望の声が出てくることがあるでしょう。自分の能力を棚に上げて、業種も前提も違うのに感情的に不平不満を口にする社員がいたりするでしょう。一方、根が深いのは、黙って辞表を出す優秀なスタッフです。優秀な彼ら彼女らは、能力が高く、経営陣に感謝し、健気に仕事を頑張りつつも、不遇に悩んだ末、業種の違いを憂い、黙って去る(異業種に転職する)ことがあります。
前者は顕在的な愚痴・文句ですが、後者は潜在的な不満です。いずれも経営課題ではありますが、前者はともかく、後者は切実な課題です。この根の深い課題が改善されなければ、中小企業が永続することは厳しくなってしまいます。

このようなとき、中小企業の経営陣及びスタッフは、論理的かつ慎重に考えなければなりません。もちろんスタッフは厚遇されたいでしょうし、経営者だって可愛い社員に“いい思い”をさせてあげたいでしょう。しかし、“いい思い”とは何でしょうか。まずはそこを履き違えないようにする必要があります。

例えば、我々のコンサルティングでは、以下の手順で、論理的かつタイムリーに、“いい思い”とは何なのかを検証しつつ、人事戦略を立てます。
【1】主観的情報(Subject)
→ スタッフや現場の声に耳を傾ける
【2】客観的情報(Object)
→ 回収した現場の声を第三者が精査・分析する
【3】評価(Assessment)
→ 経営指標や世間の動向を参考に、現場の声を評価する
【4】計画(Plan)
→ 経営戦略を策定する
これはSOAPといって、医療従事者が論理的にカルテを記載する方法の1つです。
会社経営もこのロジックに沿っていれば、再現性高く論理的に経営ができます。

我々のクライアントでは、人事戦略における【1】主観的情報(Subject)、即ちスタッフの現場の声に耳を傾けるために、定期的にスタッフ満足度調査を実施しています。職場にはどのような改善点があり、どのような伸び代があるのかを確認するための調査です。概ね年1回は定期的に実施しています。ちなみに、人間は年1回健康診断を受診します。犬もフィラリアの検査の際に年1回血液検査をします。定期的に受診して時系列で推移を把握することは、健康管理の王道です。それと同様に、経営の品質管理のためには、職場でもスタッフに満足度の確認をしています。職場の改善点や伸び代を早期発見して、人事戦略の参考にします。

次に、【2】客観的情報(Object)、回収した現場の声に基づいて、職場に対する満足度のスクリーニング検査をします。労働環境、賃金体系、チームワーク、自社の強み、自己実現、世の中への貢献などの項目で、「マズローの欲求段階説」を参照しつつ分析します。これらのうち、どの項目の満足度が高いのか低いのか、職種や年代ごとにどのような傾向があるのか、そういった分析をすることで、客観的に現場の現状を把握します。

そして、主観的情報(Subject)と客観的情報(Object)を踏まえ、
【3】評価(Assessment)をします。職場の課題と強みは何か、同業他社と比較してどうなのかを浮き彫りにします。「ハーズバーグの二要因理論」(※後述します)も参照して評価します。

評価(Assessment)を済ませたら、【4】計画(Plan)、即ち経営戦略を策定します。課題を克服するにはどうするか。強みを生かすにはどうするか。目指すべき方向性を導き出して、論理的に経営品質を高めます。

以上のような手順で、スタッフに“いい思い”をしてもらえるように、そして中小企業の経営陣にご繁盛して頂くようにサポートしています。

2025年の人事戦略でポイントになるのはハーズバーグという臨床心理学者の「二要因理論」でしょう。曰く、人間の欲求は(1)「外的に充たされたい低次の欲求」と、(2)「内的に充たされたい高次の欲求」に分けられています。
(1)は衛生要因といって、労働環境、賃金体系、チームワークなどの“働きやすさ”が該当します。衛生要因(働きやすさ)は一定レベル充たされないと不満に感じますが、一定程度充たされれば、それ以上はどれだけ充実しても満足にはつながらないと結論付けています。
(2)は動機づけ要因といって、自社の強み、自己実現、世の中への貢献などの“働きがい”が該当します。動機づけ要因(働きがい)は充たされなくても不満にはならないけれど、充たされれば大きな満足につながると結論付けています。

ハーズバーグの理論を分かりやすく「食事」に例えて解釈すると、“いい思い”とは、「(1)の衛生要因(働きやすさ)で腹一杯になったら、それ以上は食傷気味になるので、

(2)の動機づけ要因(働きがい)も、別腹のデザートのように、胸一杯にワクワクさせて、コース料理を満喫するようなもの。(1)(2)も両方大事。」と理解することが出来ます。

冒頭のように初任給が30万円40万円という企業は、(1)の衛生要因(働きやすさ)の中の賃金が突出していますが、(2)の動機づけ要因(働きがい)も魅力的でなければ、あまりワクワクはしないと考えられますので、人事担当者のマネジメント能力が問われます。

歴史に学ぶという観点で、筆者が新入社員だった1990年を振り返ります。当時はバブル期の最後で、就職戦線は超売手市場でした。ちやほやされて就職し、初任給は突然上がったようで、上の先輩の給料を抜いてしまう珍事がありました。当時、私の勤務していた商社は創業20年で東証2部に上場した伸び盛りの企業でした。某コンサルティング会社が社員研修等で関与しており、いろいろと社員教育を施してくれました。経営陣は社内イベント等にもかなりの時間とエネルギーとコストを投下して下さっていました。経営方針発表会で経営状況を丁寧に説明したり、表彰式を開催して働きがいの高揚を図ったりしていました。自由な社風と、共同体組織の強さを併せ持つ、素晴らしい企業だったと思います。その後、創業30年弱で東証1部に上場し、現在は東証プライムです。
マネジメントの本質を鑑みると、(1)の衛生要因(働きやすさ)を賃上げ等で整えた際は、意識して(2)の動機づけ要因(働きがい)を整える。これは実に理に叶ってます。「ハーズバーグの二要因理論」は、普遍的な理論と言えるでしょう。

一方、(1)の衛生要因の賃金等で大盤振る舞いがなかなか難しいという中小企業の場合、今のご時世は、衛生要因(働きやすさ)が不満となって離職してしまうリスクが高まりますので、賃金などの衛生要因(働きやすさ)を上手に整える必要があります。労務に関する法令順守するのは当然として、それ以上に施してあげたいけれど先立つ原資が無いという場合は、夢を語るのが王道です。「ポケットの中は空っぽだけど、俺には夢があるぜ」というロックンローラーの生き様のような話ですが、それを賃金体系と評価制度でコミットすればよいのです。
念のため付言すると、労働基準法には最低賃金に関する法的強制力がありますが、どれだけたくさん払うかに関しては、法的強制力はありません。もちろん、嘘や偽りは許されませんが、信賞必罰で功績ある者は必ず賞しますというコミットは罷り通ります。
例えばトリマーであれば、「個人(又はユニット)売上の〇〇%を目安にお支払いしますよ、年収△△△万円をご希望でしたら、1年間での売上は□□□□万円をクリアーすればOKです」という賃金体系を整備すればよいのです。
そのうえで、(2)の動機づけ要因(働きがい)を思いっ切り高めることが、中小企業の勝負どころです。独自の強み・得意分野を徹底的に強化するとか、飼い主さんからの感謝の声をシャワーのように浴びられるように工夫するとか、世のため人のために積極的に活動するとか、従業員がワクワクすることを如何にサポートするかが、経営陣の腕の見せ所です。

それでは、あなたの職場では如何でしょう。労働環境、賃金体系、チームワーク、自慢できること、自己実現、世の中への貢献などで、“いい思い”を満喫できているでしょうか。
健気に頑張っていらっしゃるトリマーさんには、自助努力で自身の厚遇(働きやすさ)を勝ち取りつつ、より一層飼主さんに感謝されるように目線(働きがい)を上げていただきたいです。2025年はいろいろと変化の年になりそうですが、経営陣には、スタッフの年収を力相応に引き上げつつ、経営品質を総合的に高めて頂きたいと思います。

【まとめ】
・国は賃上げを奨励しているし、雇用の流動化も後押ししている
・既存スタッフの中から賃上げに対する要望や離職者が出やすくなるだろう
・経営者は普段からスタッフの満足度を正確に把握する必要がある
・中小企業は力相応に“いい思い”を社員に提供できる仕組みをつくろう



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著者紹介
株式会社フクノカミ
代表取締役 金子男也

経営コンサルタント
1967年生まれ。静岡県出身。関西在住。

世界で初めて株式上場した国内最大級のコンサルティング会社にて、 動物病院やトリミングサロンなどのペット関連事業に専門特化して 20年以上勤務し、円満退社。 その後、株式会社フクノカミを創業。 動物病院やトリミングサロンなどの中小企業が 100年繁盛する仕組みづくりのサポートを展開中。 マーケティング、マネジメントから事業承継まで、 一気通貫で中小企業の経営課題に対応。

公式HP :https://fmcf.co.jp/

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