第5回 フィールドワークの目的とは。



求人票を見ても目移りするだけで、なかなか志望先が絞りきれない場合は、部屋を出て、ひたすらペットショップやドッグサロンを見てまわる(フィールドワーク)ことをお勧めします。

面接では、「当社の店舗をどのくらいまわりましたか」「他店と比べてどのような印象をもちましたか」などと普通に質問されると思いますので、しっかりお店を見ておかないと答えられませんから、フィールドワークは必須ということですが、それだけが目的ではありません。
結論から言えば、目に見えるものと見えないものを見て、決断しきれないでいる自身の態度を決めるということが、フィールドワークの真の目的だと思います。そのためには、 “お客様目線”で見るということと、そこで働くのだという(同業者目線とでもいうのでしょうか)両方の目線が必用です。

例えば、きれいか汚いかは一目見ればわかりますよね。これはお客様目線です。一方、整理整頓されている店内から感ずるきれいさは、目に見えるきれいさだけではなく、(ご自分でも経験があるから〕こうやって毎日掃除しているのではないかと(見えない)“人の手”までも想像しますよね。これが同業者目線です。施設や設備だけではなく、お店にいる犬たちの姿を見ても同じことが言えます。いずれも、あなたは目に見えないものを見て(感じて)いるわけです。
ところが、学校から調べるようにと指導される客数や客層、主力犬種、ペット美容かショー美容か、トリマーの平均年齢・人数、あるいは美容料金や美容システムなどは、いくら見て資料を集めても、参考にはなるでしょうが、あなたが求め、探している答えが見つかるとは思えません。そこで働くのだという意識、つまり、同業者目線が欠落しているからです。
そのようなときには、ご自分と年齢が近そうなトリマーを見つけて、そのトリマーの動きをずうっと追いかけてみてください。きっと、目には見えない何かを感ずると思います。そのトリマーの想いとか…。それを受け取った瞬間、あなたの目は輝やいていると思います。そういう方は、お店側も就活で来ている学生さんだなということが分かりますから、逆に声をかけられることもあるかもしれません。実際に、それがきっかけで研修が決まり、その後内定したという人もいます。

フィールドワークは、面接に望む皆さんにとっては必須であり、数多く回ることも、お客様目線で見て、感ずることも大切なことですが、就活中の皆さんには、お客様から見えないところで汗を流すプロトリマーたちの姿を想像していただきたいのです。
なお、一般のお客様に混じって、お店に迷惑をかけずに見学するというのが、フィールドワークの暗黙のルールです。むやみに写真をとるのはNGですよ。また、どうしても店長やスタッフに聞きたいことがあれば、事前にアポをとってお願いしてみてください。



著者プロフィール 飯田 一成 kazushige iida キャリアコンサルタント。1956年生まれ。神奈川県出身。トリミングスクールの就職部長とペット企業の採用担当ディレクターの経験を生かして、動物系専門学校・ペットスクール等の就職セミナー講師、学生募集のコンサルティングを中心に活動中。 ■動物系専門学校関係者の皆様へ:筆者による就職セミナーのご案内